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仙台地方裁判所 昭和25年(行)7号 判決

原告 鈴木ソノ

被告 仙台市長

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、請求の趣旨

原告訴訟代理人は、被告の原告に対する昭和二十四年十二月二十七日附復第百八十七号移轉命令を取消す、訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求めた。

三、事  実

原告は昭和二十二年二月訴外緑樹合資会社(以下單に訴外会社という)より同会社所有の仙台市東四番丁十八番地宅地五百十三坪の内二百十六坪を建物所有の目的で期間の定めなく賃借し、同地上に別紙目録記載の建物を有するものであるが、被告は右宅地を特別都市計劃法(以下單に法という)に基く土地区劃整理により、訴外高村誠の所有地に対する換地予定地として指定し、昭和二十四年十二月二十七日附復第百八十七号を以て、原告に対して右建物を昭和二十五年三月六日迄に移轉すべき旨の命令を発し、右命令書は同年二月初旬原告に到達した。しかしながら、法第十五條により土地区劃整理施行のため必要があつて建物の移轉を命ずる場合には必ず換地予定地を指定すべきであるに拘らず、被告はこれをしていないので、右命令は違法であるからその取消を求めるため本訴に及ぶと述べ、被告の主張に対し、被告主張の日に土地区劃整理施行地区の告示があつたこと、その主張の期間内に原告がその借地権の届出をしなかつたこと、及び被告がその主張の日に訴外会社に対し訴外高村誠の換地予定地の指定及び同会社の換地予定地の指定の通知及び同会社の換地予定地の開始の通知をしたことはいずれもこれを認めるけれども、賃借人である原告にはその通知がなかつた。被告は特別都市計劃法施行令(以下單に令という)第四十五條所定の申告をしないものには換地予定地を指定する必要がないというけれども、同條は所有権以外の耕地整理法第三十三條所定の権利につき換地を指定すべき場合の規定であるから法第十五條の換地予定地を指定すべき場合には適用がない、從つて整理施行者が右権利の存在を知る場合には、前記申告を爲さない場合にもこれらの権利者に換地を指定すべきであり、殊に土地上に建築物その他の工作物がある場合は、その所有者はその土地上に何等かの権利を有することが明かであるから整理施行者は右権利が所有権以外の権利であつて、令第四十五條の屆出がない場合でも、ひとまず換地予定地を指定し正式の換地交付までの間にその権利の所在については当事者間において明確になるのを俟つかまたは換地交付の場合これを正式に決定すべきであると、述べた。(立証省略)

被告訴訟代理人は主文第一項同旨の判決を求め、答弁として、原告が訴外会社所有の仙台市東四番丁十八番地所在宅地内に木造平屋建外二棟(建坪附属工作物を含め延八十九坪二合五勺である)を有すること、被告がその敷地を高村誠所有地に対する換地予定地として指定したこと、及び被告が原告に対し昭和二十四年十二月二十七日附復第百八十七号移轉命令書を発し右命令書は昭和二十五年二月初旬原告方に到達したことは、いずれもこれを認めるが、原告と右会社との間に、右敷地につき賃貸借契約が存することは知らない。

しかしながら、被告は昭和二十三年八月三十日令第十條に則り土地区劃整理施行地区を告示し、同年八月三十一日から九月三十日までの間に同第四十五條による所有権以外の未登記権利の届出を催告したにもかゝわらず、原告は右期間内に屆出をしなかつたので、原告は換地予定地の指定をうける権利を喪失した。被告は前記会社に対し昭和二十三年十一月九日附從前の所有地仙台市東四番丁十八番地と、同十五乃至十七番地とを一括し、合計千二百十三坪七合八勺に対し、同一場所において所定の減歩率に從つて約七百七十一坪に減歩し、この範囲の土地を換地予定地に指定する旨通知し、昭和二十四年四月十八日附を以つて同日を使用開始の期日とする旨通知したと述べた。(立証省略)

四、理  由

成立に爭がない甲第二号証によれば、原告が訴外会社所有の仙台市東四番丁十八番地所在宅地内に別紙目録記載の建物を所有することを認めることができる。被告が右宅地を高村誠の所有地に対する換地予定地として指定し、昭和二十四年十二月二十七日附原告に対し右建物を昭和二十五年三月六日までに移轉せよとの移轉命令書を発し、右命令書が同年二月初旬原告に到達したことは当事者間に爭がない。

原告は、被告は右移轉命令を発するについて原告に対し右換地予定地の指定をしなかつたから右移轉命令は違法であると主張する、しかしながら、被告がその主張の通り、仙台市東四番丁十八番地を含む宅地に対する換地予定地の指定をなし、訴外会社に対し、その通知及び使用開始の通知をしたことは当事者間に爭がない。尤も被告が原告に右換地予定地の指定の通知をしなかつたことは被告においてこれを爭わないけれども、原告が右宅地についてその主張する賃借権の登記を有することについては之を認むべき証拠がなく、令第四十五條は所有権以外の未登記権利者も換地の交付を受け得ることを規定しているけれども、同時にこれらの権利者は予め土地区劃整理施行地区の告示があつた日から一ケ月以内に所定の権利の屆出をしなければならないと定め、所有権以外の未登記権利者でこの屆をしない者は、換地の交付を受けることができないこととした。從つてかような者は從前の土地に対し換地処分がその効力を生ずる迄、仮の処置として爲す換地予定地の指定の通知も亦之を受けることができないと解すべきである。

原告は令第四十五條に権利の屆出をしない者に対し、換地の指定をしなくともよい旨を規定しているのは、当事者の権利の屆出がないと所有権以外の未登記の権利については、整理施行者がこれを知ることが難しいからであり、整理施行者が右権利の存在を知る場合、殊に土地上に建築物その他の工作物がある場合には、その所有者がその土地上に何等かの権利を有することが明かであるから、権利の屆出がなくとも、換地予定地を指定し、換地交付までの間に権利の存在について当事者間において明かとなるのを俟つか、または換地交付の際正式に決定すべきであると主張するのであるが、土地上に建築物その他の工作物を所有する事実から直にそのものが土地に対し何等かの権利を有することが明かであるということはできないし、移轉命令に先立ち、その敷地について法第十三條第一項の換地予定地の指定(從前の土地所有者に対する通知及び別に使用開始の日を定めたときはその通知を含む)が爲されておれば、右土地上の建築物その他の工作物の所有者に、その指定の通知が爲されなかつたとしても、もしそのものが土地に対して何等かの権利をもつていたとすれば、直に從前の土地の所有者に対し、換地予定地について、從前の土地に対して有していたと同一の権利を主張しうる。かようなわけで甚だしく不当な結果になることはない。

本件において、被告は昭和二十三年八月三十日令第十條に則り土地区劃整理施行地区を告示したが、原告は同年八月三十一日から九月三十日までの間に同令第四十五條による自己の権利の届出をしなかつたことは当事者間に爭がない。よつて、被告が本件移轉命令を発するに先立ち、原告に対し換地予定地の指定の通知をしなかつたことは少しも違法ではない。

以上の通りであるから、右命令の取消を求める原告の本訴請求は理由がないから、之を棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九條を適用して主文の通り判決する次第である。

(裁判官 松尾巖 伊藤正彦 船田三雄)

(目録省略)

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